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北朝鮮に賠償命令 約550億円の算定根拠について

2018年12月27日 |  kenichi inaho

今月24日、2016年に北朝鮮で拘束されて解放後に死亡した米国人大学生オットー・ワームビアさんの両親が起こした裁判で、米国の首都ワシントンにある連邦地裁は、北朝鮮に5億100万ドル(約550億円)の支払いを命じました。

この額の大きさに驚かれた方もいるかもしれません。日本では、実際に生じた損害を金銭的に評価した額を賠償額として採用するため、こんなことにはならないのですが、米国には「懲罰的損害賠償」(punitive damages)といって、加害者に制裁を加える目的で賠償額を上乗せさせる制度があるのです。

米国の報道を見ると、5億100万ドル(約550億円)の内訳は次のようになっているようです。

本人: 2100万ドル(補償的損害賠償)+1億5000万ドル(懲罰的損害賠償)
父親: 1500万ドル(補償的損害賠償)+1億5000万ドル(懲罰的損害賠償)
母親: 1500万ドル(補償的損害賠償)+1億5000万ドル(懲罰的損害賠償)

精神的苦痛や経済的損失により評価される「補償的損害賠償」は全体の約10%に過ぎず、残りの約90%が「懲罰的損害賠償」となっていることがわかります。北朝鮮の経済規模は鳥取県レベルに過ぎませんし、また、拷問の疑いを繰り返し否定していますから、さすがに北朝鮮が支払いに応じることはないように思います。