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「ティラミスヒーロー」騒動 雑感

2019年1月27日 |  kenichi inaho

久々に知的財産権絡みのニュースが世間を騒がせています。シンガポール発の瓶入りティラミス店「ティラミスヒーロー」とブランドコンセプトが類似したティラミスのテイクアウト店「HERO’S」を巡る騒動です。HERO’Sと社長が同じである「株式会社gram」が「ティラミスヒーロー」の名称及びロゴを商標登録していたことも判明し、「日本の会社がパクられる側ではなくパクる側になった」という今までになかった構図も、大きな騒動となった一因であることは間違いありません。

特許庁で一度登録されても、他人の周知な商標に類似すると認められる場合や、他人の業務と混同を生ずるおそれがある場合や、公序良俗違反と認められる場合などは、異議申立や無効審判によって潰すことも可能です。(ちなみに、「ティラミスヒーロー」のロゴの商標登録については異議申立がなされています。)

シンガポール側からの「パクリ」が発覚してからも、「使用権をお渡しする所存でございます」といったように、「商標権の譲渡」ではなく「使用権の許諾」に言及することで権利に固執する姿勢を見せたり、また、「株式会社gram」が「横取り」的と思われる商標登録出願を続けていることが発覚したりと、炎上の燃料が次々と投下されています。

私も先日、東京出張時の帰りがけに、表参道にある店舗を訪れました。記者と思われる方が数名外に立ってはいましたが、激しい批判を浴びているためか閑散とした状態でした。

あまり話題とはなっていませんが、「株式会社gram」の出願には弁理士(または特許業務法人)が代理人として付いているところも興味深いです。一般的に代理人は出願前に「商標調査」を実施します。すでに使用されている商標を調査で見つけることができなかったのか、見つけられても「登録できるだろう」と判断したのかもしれません。

法律家が陥りがちなのが、法的な思考に固執するあまり、世論の反感を買ってしまうという、いわゆる「評判リスク(レピュテーションリスク)」を軽視してしまうことです。(『こうして知財は炎上する』(NHK出版新書)では知的財産権絡みのトラブル事例を紹介しています。)話は変わりますが、小室圭さんが弁護士を通じて公表した文書にも同じことが言えます。「母の元婚約者からいただいたお金を返済する義務はない」ことを論理立てて説明するものでしたが、法的に正しいのだとしても、このようなコメントで世間が納得するはずがありません。